次世代DNAシーケンシングの原理
Principle of next generaion DNA swquencing
次世代DNAシーケンシングの原理
1. 次世代シーケンシングの時代
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2. Illumina社 HiSeq2000、Genome Analyzer IIxによるシーケンシングの原理
Illumina社 HiSeq2000、Genome Analyzer IIxは、ブリッジPCR法とSequencing-by-synthesisいう手法(下記の「シーケンシングの原理」を参照)により、フローセル上で膨大な数の目的DNAを増幅させ、合成しながらシーケンシングを行います(図1)。Genome Analyzer IIxを用いた解析アプリケーションにつきましては、こちらのページをご参照ください。→ こちらより
フローセル
Genome Analyzer IIxで使用するフローセルは8レーンで構成されています。必要なデータ量により、1レーンの解析より承ります。
シーケンシングの原理
① ブリッジPCR法
断片化DNA(目的物)の両末端に2種類の異なるアダプター配列(アダプター1と2)を付加させた後、このDNA断片を1本鎖にし、5’末端側をフローセル上に固定させます。さらにフローセル上には予め5’末端側のアダプター配列が固定されており、DNA断片の3’末端側のアダプター配列は、フローセル上の5’末端側のアダプター配列と結合することができます(このとき橋渡しをしたような状態(ブリッジ)を形成させます)。この状態でDNAポリメラーゼによってDNA伸長反応を行った後に変性させると、2本の1本鎖DNA断片が得られます。その後、ブリッジ結合→伸長→変性を繰り返すことにより、多数の1本鎖DNA断片を局所的に増幅固定できるようになります。そして、この1本鎖DNAを鋳型として、シーケンシングを行います。この手法により1回の解析において40~200 Gbという膨大な配列情報を入手することができます(図2)。(1)
② Sequencing-by-synthesisの原理
シーケンシングは蛍光標識したdNTPの取り込みを蛍光顕微鏡により解析するという方法を採っています。3’末端側がブロックされたdNTPを用い、レーザーで蛍光を読み取ったのち、保護基を除去して逐次反応させることにより、1塩基ずつ連続して解析することができます。解析できる鎖長は150塩基×2までに達し、ピコタイタープレートよりもはるかに小さい単位での解析が可能ですので、高密度化することにより大量配列データを得ることができます。
シーケンスプライマーを添加後、DNA polymeraseによって3’末端ブロック蛍光dNTPの1塩基伸長反応を行います。そして、レーザー光により塩基に結合している蛍光物質を励起させて、そのときに起こる発光を写真として記録します。写真は、4種類の塩基を決定させるために4枚(A, C, G, T)撮ります。すべての写真を取り込んだ後、写真データから塩基を決定させます。この流れを1サイクルとして、これを繰り返して、2サイクル目、3サイクル目と続いていき、全長をシーケンシングします(図3)。
参考文献
(1) 養王田正文(2008) 「次世代シークエンサー-1000ドルゲノムの時代はいつ来るか-」 現代化学2008年8月号 株式会社東京化学同人 pp 24-30
図2. ブリッジPCR法
図3. HiSeq2000とGenome Analyzer IIxにおけるシーケンシング反応の原理
シングルリード法・ペアエンド法
シングルリード法はDNA断片の片側をシーケンシングする手法です。これに対して、ペアエンド法は断片の両側からシーケンシングする方法です(下記図4.参照)。ペアエンド法ではシングルリードの2倍のデータ量が得られ、より精度の高いデータが得られます。
図4. シングルリード法とペアエンド法
マルチプレックス法
DNA断片にバーコード配列を付与することによって、複数サンプル由来のDNA配列を正確に識別することができます。この方法は、ゲノムターゲット領域に特化した研究や、ゲノムサイズが小さい生物種の解析に最適です。さらに発現解析へも応用できます。少ないレーン数で多サンプルを解析して、安価で済ませたいという方におすすめです。今後、TruSeq法が普及すると、この方法が標準になります。
3. Roche(454)社 Genome Sequencer-FLXによるシーケンシングの原理
Roche(454)社 Genome Sequencer-FLXは、膨大な数の非常に微小なウェルをもつピコタイタープレート(図5)を用いて、ピロシーケンス法(詳細は下記のシーケンシングの原理を参照)により配列を決定します。Illumina社 Genome Analyzer GAIIxに比べると、データの量やコストの面では劣りますが、平均400 bpと長く読むことができ、解析データの質も非常に高いことが長所です。
ピコタイタープレート
Genome Sequencer-FLXで使用するピコタイタープレートは、多サンプルを簡易的に解析するようなプロジェクト用に数種類のガスケットがオプションとしてあります。これらのガスケットを使用することに
よりピコタイタープレートを物理的に区切ることができ、一枚のピコ
タイタープレートで2~16サンプルを一度に解析することができます(図5)。
図5. Genome Sequencer-FLXで使用するピコタイタープレート
シーケンシングの原理
① DNAライブラリーの調製
ゲノムDNAを断片化し、3’末端と5’末端に特異的に結合する短い2種類のアダプターを結合させて1本鎖DNAにします。
②エマルションPCRによるクローン増幅
①で調製した何十万の1本鎖DNAフラグメントはアダプターを介してビーズに結合します。これらのビーズを油中水滴エマルションの中に包み込むことにより、 ビーズとDNAフラグメントを持つマイクロリアクターを形成します。その後、油中水滴エマルション内でのエマルションPCRによりビーズあたり数百万コピーにまで増幅されます。増幅反応後、ビーズを取り出すため油中水滴エマルションを破壊し、ビーズを集め濃縮します。集められたビーズをガスケットがセットされたピコタイタープレートへアプライします。
③ シーケンシング反応の原理
反応系にdNTPのうちのどれか一つ(dATP・dGTP・dCTP・dTTP)を加え、通常のPCRを実施するようにDNAポリメラーゼによる伸長反応を行います。dNTPがDNAに取りこまれるときに発するピロリン酸を基質として、sulfrylaseによりATPを生成させます。このATPとLuciferinを基質としてLuciferaseが蛍光を発し、この強度をCCDカメラに検出します。蛍光反応に関与したATPはApyraseによりdNMPに分解され発光がOFFになります。また、重合に関与しなかったdNTPはApyraseによりdNMPに分解され、次の伸長反応には関与はいたしません。以上の過程をdNTPの種類を変えながら繰り返していきます。
図6. Genome Sequencer-FLXのシーケンシング反応の原理
4. DNAチップとの比較
・ DNAチップでは見逃していた低発現量の遺伝子転写産物の捕捉も可能になります!
・ DNAチップ2~3回分の価格で、次世代シーケンシングが1回出来ます!(*DNAチップ1回分を、約15万円としています。)
・ 1回のランで、大規模な配列データの取得が可能です!
図7. DNAチップと次世代シーケンシング
次世代シーケンシングにはDNAチップに比べて、こんなメリットがあります!
次世代シーケンシング | DNAチップ | |
解析法の特長 | ・ 配列に基づいた検出のため、解析の特異性が直接示される。 | ・ ハイブリダイゼーションによる検出のため、結果が間接的。 |
解析可能な発現産物 | ・ すべての発現産物(生物種を選ばない)
・ 未知の発現産物の解析が可能。 |
・ プローブをデザインできる配列のみ。 |
得られるデータ・精度 | ・ デジタルデータ出力
・ 蛍光によるバックグラウンドがない。 ・ データ量が多く、ダイナミックレンジが大きい(1:100,000でも問題なし。読む回数を増やせばより大きくなる)ため、定量化の ・ 実験者・プロトコール・手法・使用製品による違いがなく、再現性・正確性は高い。 |
・ アナログデータ出力。
・ 蛍光によるバックグラウンドがある。 ・ ダイナミックレンジが小さい(最小出力の1,000倍から10,000倍程度の範囲まで)ため、定量化の精度は低い。 |
コストパフォーマンス | 同じ試料を3回ずつDNAチップで解析するならば、次世代シーケンシングのほうが安価。 |